2021年6月現在、世界中のオリンピック開催の不安をよそに、ヨーロッパでは多くのスポーツ大会が行わています。バレーボール、ホッケー、テニス、そしてサッカー。コロナもワクチン効果か?一時期よりだいぶおさまってきており、天気もいわゆるヨーロッパの夏の天気が続いており、パラダイス感満点です。(とはいえ、UKではインド株による?再びの増加?)

そんな中、国を挙げて盛り上がっているのがサッカーのヨーロッパカップ2020。オランダの場合、前回大会に出場できなかったこともあり、例えば毎日のトップニュースにサッカーがきたり、大手スーパーのキャンペーンは軒並みサッカー一色。街中はオレンジ一色。至るところで、サッカー応援シーンを見かけます。

さて、そんなサッカーのユーロカップですが、いわばヨーロッパの国別対抗戦。昨年の開催予定が、オリンピックと同じく一年延期されての開催。ということで待ちに待った感がすごいのですw

 

大会を襲った不幸な出来事

そんな中、迎えたデンマークvsフィンランドの一戦。ここで大変悲しい出来事がおこりました。なんとデンマークのエリクセンという選手が、試合中、何もないところでボールを取りに走り出したところ突然倒れこんでしまったのです。明らかに普通ではない状況で、完全に意識を失ってしまいました。のちに心臓発作だった?と言われていますが、世界中が一瞬、我が目を疑ったと思います。一瞬何が起こったか分からなかった大変ショッキングな出来事でした。一瞬ではありますが、確実に心停止したとのこと。

しかし、ここから両チーム、関係者、審判、医療スタッフ、両国観客全ての対応が、それはそれは素晴らしいものだったのです。

まずは倒れ込んだエリクソンの応急処置というか、レスキューチームが選手の元に駆けつける前(当然、大至急駆けつけたものの)に、チームのキャプテンのケアー(ACミラン)が、喉の軌道確保や舌の巻き込みを防止する応急処置を行いました。それによって、(結果的に)一命を取り留めたエリクセンの元に、医療チームが駆けつけました。その後、ケアーは、フィールドで行われているエリクセンの応急処置の様子をカメラや観客の眼に晒さないために、チームメートと並んで、いわば人間の壁を作りました。さらに、フィールドに駆け降りてきたエリクセンの奥さんを慰めるということまでしました。そして応急手当てが終わった医療チームは、そのままエリクセンを病院に運んで行きました。

キャプテン、ケラーの咄嗟の判断、行動、そして審判、医療チームの迅速な対応は素晴らしいものに。両チームの観客は相互にエリクセンにチャントを送り合い、試合再開時にはリスペクトの拍手でエールを送り、フィンランドチームは得点後も派手なセレブレーションは行いませんでした。この試合は、デンマークのホームで行われていました。結局、中断後再開されましたが、その間の主催のオペレーションもスムーズでした。

確か1時間弱の中断の間に、「エリクセンが病院で目を開けて、しゃべるまでに回復した」と速報も流れてきました。後日わかったことには、その頃には本人も「I’m OK」というメッセージをWhatsAppでチームメイトに送っていたようです。

イタリアのインテルのエースで、エリクセンとチームメイトのルカクは、この試合の後にベルギー代表として試合が予定されていましたが、試合前に相当混乱したと言っていました。そして自分たちの試合で最初に決めたゴ=ルをエリクセンにささげ、カメラを通じてメッセージを送りました。

その間、こうした一連の状況はtwitterやFBなどを通して、世界中でシェア、拡散されて行きました。

「エリクセンの倒れた映像はシェアされるべきではない」「いま、シェアされるべきはエリクセンファミリーの温かい写真で、全員で祈りを捧げるべき」「ケラーの対応は素晴らしい。みんなでエリクセンの回復を祈ろう」などという言葉が、他の国のサッカー選手はもちろん、サポーターなどを含め世界中で交わされていました。デンマークの女性首相フレデリクセンは、「エリクセンの状態が安定していることが、最高の報告。国民的なショックは、国民的な安心感へと変わった。デンマークを代表して、エリクセン選手、奥さん、お子さん、ご家族の皆さまへ。1日も早い回復をお祈りいたします」「サッカーの試合において、勝敗がそれほど重要でないということは、めったにない」と今回は勝敗ではなく、デンマークとしてはエリクセンの回復が何より重要だというメッセージを出しました。

 

幸せなの国の戦いで起こった不幸な出来事

エリクセンは、元々オランダのアヤックスで活躍したデンマークの選手。その後、欧州のビッグクラブへと渡って、2年前にはアヤックスのチャンピオンズリーグ決勝進出を阻んだトッテナムの選手として活躍していました。オランダでもよく知られた選手です。現在は、イタリアのインテル(今年優勝した)の選手で、同じミラノを拠点とするACミラン所属のケラー(デンマークチームのキャプテン)とは、非常に仲が良く家族ぐるみの付き合いだったようです。

そんな背景もあって、ヨーロッパ中が固唾を飲んで見守った悲劇は、どうやら最悪の結果には至らずに済んだようです。

ただ、結果的にはこの試合に負けたデンマーク。試合翌日には監督が「キャプテンのケラーやチームメイトの心理的状況を思えば、試合を行ったことが良かったのかどうか?は分からない」ということを会見で言っていました。

起こってしまったことは不幸ではあったものの(そして、最悪の不幸は免れたようだが)、その後の両国の対応は素晴らしいものでした。なんとなくこの両国は「世界幸せランキング」なるもので、常に上位にいると思うのですが、そうした事実が、今回の対応にも表れていたのではないか?と感じます。もし、これが他の国の選手だったら…?とか、日本の選手だったら…?なんて考えてみました。

この試合の両国は、たまたまスカンジナビアンの国同士。なんか、両国の対応はファンも含めて、成熟というか、素晴らしいものだったと改めて感じます。こうしたことに「幸せランキング」が関係するのかは分かりませんが、なぜか両国の余裕というか、マチュアーっぷりというかレジリエンスというか…、まあ、「幸せ度の充実感」でしょうか?っていうことをを感じさせられました。

ということで、国が幸せであるかどうか?というのは、やっぱり大事だなあと思った出来事でした。エリクセン選手の1日も早い回復を願ってやみません。

 

 

 

 

 

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